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リレーエッセイ

エコマテリアルのすすめ!!

(独) 物質・材料研究機構エコマテリアル研究センター  大澤 嘉昭

 物質・材料研究機構ではエコマテリアル研究を推進しています。エコマテリアル(Ecomaterials)1,2)とは「Environmental Conscious Materials:環境を意識した材料」という意味の造語です。この言葉は日本で作られたものですが、今では世界中で通用します。材料開発においてのエコマテリアルの概念は、「材料本来の性能」、「環境に優しい性能」、そして「人に優しい性能」を併せ持つことにあります。 二酸化炭素(CO2)の増加による地球温暖化など環境問題が深刻になっている現在、このエコマテリアルの考え方をより一層推進する必要があります。

 そして、このエコマテリアルを推進する上で重要となるのがリサイクルです。家電リサイクル法や自動車リサイクル法などが施行され、近年、循環型社会の構築に向けた取り組みが注目されています。アルミニウムをリサイクルするときに必要なエネルギーについて考えてみましょう。アルミニウムはボーキサイトという鉱石を電気分解して製造しますが、原料からアルミニウムをつくる場合と回収した使用済みのアルミニウム缶などから再度つくる場合を比較すると、前者に比べて後者のほうがわずか3%のエネルギー消費で済むといわれています。いかにリサイクルがエネルギー消費を抑制し、CO2削減に貢献できるかがわかります。

 資源の少ない日本においては、今後より一層のリサイクルが重要ですが、そのためにメーカはより解体性に優れた設計をし、消費者は分別を徹底して高純度の資源を生み出す社会を目指さなければいけません。しかし、このリサイクルにも課題があります。例えば、使用後の自動車をシュレッダーで粉砕したとき、使用されている小型モータなどは、銅を含む鉄スクラップとして磁選されてしまいます。鉄に銅が混入すると熱間圧延で割れるなどリサイクルができません。スチール缶のように蓋にアルミニウム合金を含むスクラップでは、製鋼所で転炉に入れて酸素を導入しアルミニウム合金をアルミナとして除去します。このような不純物が入ったスクラップを廃棄したり、不純物を除去したりせず、不純物を無害化さらには特性改善因子として積極的に利用できるプロセスの開発が望まれます。

 鋳鉄は昔からリサイクルの優等生です。製品にもよりますが不純物に対する許容度も大きく、銅を含む鉄スクラップなども鋳鉄に利用することで固溶強化としてスチールより非常に多くの銅を利用できます。アルミニウムを含む鉄スクラップなども鋳鉄に利用することで耐摩耗性、制振性などに優れた鋳鉄にできます。今後も廃棄物を削減し、循環型社会の構築のためにエコマテリアルの概念を取り入れ、より良い知恵を出してリサイクルを推進しましょう。

参考文献: