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リレーエッセイ

中国への旅

帝京大学 理工学部 頃安貞利

 9月12日から17日まで6日間、中国第3回消失模型鋳造技術国際会議に出席するために、西安と宝鶏に行く機会を得た。学会会場の宝鶏は西安から西に約170kmにある。写真は会場で撮ったもので、左から日本消失模型鋳造研究会委員長の池永先生(元首相の小泉さんではありません)、私、中国消失模型鋳造技術委員長の粱氏、同副委員長の李先生である。日本の鋳造工学会の学会での消失模型鋳造の講演数は多くて2~3件ぐらいであるが、中国の消失模型鋳造技術国際会議(実型鋳造学術年会)では、40~50と非常に多く、大学関係の論文は非常に高度と思われる。参加者は約300名、工場見学は全員参加で(バス5~6台)、集合写真の撮影もあり、日本とはいろいろな点で異なっていた。中国人の講演は当然中国語のため、その内容は分からなかったが、訴えるような力強い口調で、日本人のような淡々としたものではなかった。

 当初、私の講演は初日午前中であったが、レジスト時の配布資料では3日目に組まれていた。初日の講演をのんびり聞いていたら、突然「次に講演して欲しい」と言われ、結局、初日午前中の講演となった。あの配布資料は何だったのだろう。工場見学も3日目と聞いていたが、実際には2日目に実施された。このように、運営は割といい加減なものであった。また、中国版新幹線「動車組」(日本の「はやて」と同じ車両、170kmを1時間余りで結ぶ)に乗ってみたかったが、ほとんどが欠便で乗ることができなかった。オリンピック、パラリンピックの臨時増発のため車輌を北京に貸出したためで、これも日本では考えられない。中国の言葉で「馬馬虎虎(ママフフ)」(NHKの番組「中国鉄道大紀行」の中で関口知宏さんがよく使っていた)が当てはまる。これは、「いいかげん」、「適当」という意味らしいが、言葉の響きから中国国民のおおらかさを表した「細かいことは気にせずにうまくやりましょう」とのポジティブな意味だと思う。

 学会だけでなく観光もした。中国といえば、まず長い歴史ということになるが、中国の国名の変遷(中学当時の記憶のため正確ではないが)だけみても、「夏、殷、周、春秋戦国、秦、前漢、新、後漢、三国、晋、隋、唐、五代、宋、元、明、清、中華民国、中華人民共和国」と、古いだけでなく激動の歴史を歩んできた国でもある。私が主に滞在した西安(昔の長安)の町は、京都、奈良の手本だそうだが、約4km四方の明代城壁に囲まれ、比べるもののない大スケールと、ほれぼれするくらい素晴らしい景観の町並みである。ただ、今は慢性的渋滞で、見た目で分かるくらい非常に空気が悪いのが残念である。また、西安郊外にある兵馬俑の迫力も圧巻である。何もかもスケールが大きいいだけでなく美しいのだが、食べ物が私に合わず、特に回族の料理の羊肉と香辛料の匂いには苦労した。

 中国人は、「他人との距離が短い」と言われるが、そのためか中国人のおおらかさと高いエネルギを感じた旅であった。思いつくままの文章であるので、とりとめもない話になったが、中国に関しては、まだまだ言い足りないところもある。2年前の四川省への旅は、次回ということで。