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リレーエッセイ

最近思うこと

帝京大学理工学部 頃安 貞利 氏

 最近、3Dプリンタの話題をマスコミ、新聞等でよく見かけるが、この3Dプリンタに関して思うことを述べさせていただきます。前年比率200%成長している家電部門の原動力となっているのが3Dプリンタであり、従来2週間かかっていた試作が1日までに短縮され、さらに毎日何度も試作できるようになったのは、3Dプリンタによる開発スピードとコストカットが大きいと言われている。この3Dプリンタ、米国のストラタシス、3Dシステムズの2社で世界全体のシェアの75%を占めているそうである。最近、3Dプリンタ関係の講演を何度となく聞いたが、背景のスライドに必ず出てくるのはオバマ大統領の写真である。積層造形技術は、必ず脚光を浴びて、産業界で重要な位置づけになると唱えて、この分野に大きな予算を投資したと言われており、シェアの75%はその結果であるといえる。そのころ日本では、「政権、政権・・」ばかりを考えて、「ものづくり」と言う言葉は連呼することがあるが、予算の投資はバイオ、IT関係等への投資は多く、「ものづくり」関係への投資は少ないと思う。結果的に、3Dプリンタに関しては、日本は取り返しのつかない出遅れ状態である。元々日本は、プラスチックの射出成型技術は、お家芸的なもので、技術的にも高水準にあり、米国よりも日本の方が、もっと高性能なものが安く作られると思う。3Dプリンタ関係の講演でオバマ大統領の写真はよく見かけるが、日本の出遅れ状態に対して、「日本の政治家は何をやっていたのだろうか」というような講演は一度も聴いたことがない。

 また、ある地方銀行の頭取が、本学に設置の3Dプリンタを見学に来たときのことであるが、マスコミからの吹き込み等で「極めてすばらしいものが、短期間で容易に作ることができる」と先入観を持って期待していたようである。ところが、造形された模型を見て、造形物の表面の粗さ、特に積層方向に0.25mmのため、緩斜面の表面は、まるで棚田のようになっており、隣に設置されていた3軸のNC切削機で同じ模型を作成したものと比べて、明らかに表面粗さではお粗末であることに気づかれたようである。「3Dプリンタは、外観・性能的にすばらしいものを作るものではなく、試作品をいかに速く作ることに意味があるのです」と説明をしたが、非常にがっかりして帰られたようである。

 また、この3Dプリンタは、オープンキャンパスにおいても父兄の方々に人気がある(中高生よりも)。「3Dプリンタが動いているのを見るのは初めて」とか、作成した実際に可動するモンキースパナを手に取り、そこそこ感動される。さらに、本学科内のロボットの研究室では、学生自身で3Dプリンタだけでなく3D-CADも使えるので、関節のパーツや実験時の治具も簡単に作成できてしまう。ただし、学生に任せると、平気で1kgくらいの無垢の造形品も作ってしまうこともある。「いくらかかっている?」と聞いても答えることは当然できないが、もっとCADデータ上で内部を空げきにするとかの工夫をしてほしいものである。これにとどまらず、「使え!使え!」の勢いで、あっという間に、数10万円分の材料を使い果たしてしまったということもあり、材料費もよく考えて試作する必要もあると思う。3Dプリンタ本体の価格は、中高級車1台分と高いのは仕方がないが、材料は極めてありふれたABS樹脂であり、通常1kg当たり約1000円であるが、3Dプリンタ用となると1kg当たり約10万円となることに問題があると思う。とはいえ、外部業者にCADデータを送って同じものを作ってもらうと、さらに料金がかかり、納期も1ヶ月以上かかる。卒論の実験を遂行するうえに、極めて有益な武器であることには間違いないと思う。

 最近、3Dプリンタに関する用語として、AM技術「アディティブ・マニュファクチャリング」という用語も聞くようになった。「アディティブ(additive)」とは英語で「付加的な」を意味するが、何を付加しているのが全く分からない。少々安易な用語の設定である気がする。これは余談であるが、最近、AL「○クティブ・○ーニング」の導入が強制的に強いられている。このALも何がどのようにアクティブなのかが全く分からない。「○クティブ・○ーニング」(能動的学習)は、課題の発見・解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習のことで、併せて知識・技能の定着や学習意欲の向上も図ろうというもの」らしいが、この説明を聞いても、さらに何をしようとした学習法なのか分からない。このように定義が曖昧なものを強いられているのも困ったものである。私の講義では、学生が90分持ちこたえてくれないので、後半の30~45分は、前半の講義内容に関する演習問題を解かせている。「持ちこたえてくれないため」というネガティブな考えで導入したものであるが、立派に「○クティブ・○ーニング」であるそうである。

 話を元に戻して、用語関係では、RP(ラピッドプロトタイピング)とうい用語の使用に関しても少々気になる。「積層」の意味でRPと表現されることがある。本来RPとは「試作品を迅速に作成すること」であり、どこにも「積層」の意味は含まれない。CADデータからNC切削を用いて迅速に造形したとき、積層造形でなくても、この場合もRPである。RPを積層造形としてしまうのは、RPを「和製英語化」してしまっているように思える。

 以上、思いつくままの文章であるので、とりとめもない話になったが、3Dプリンタに関しては、まだまだ言い足りないところもある。残りは次回ということで。