関東支部の活動

研究

日本鋳造工学会 関東支部研究部会 第77回講演会

鋳物・ダイカストの最近の話題を聞く

 去る平成20年8月27日(水) 「鋳物・ダイカストの最近の話題を聞く」をテーマに、第77回講演会が早稲田大学理工学部大久保キャンパスで開催されました。
  ダイカストは誕生してから今年で170年経ちますが、銑鉄鋳物はその10倍以上の歴史を有しています。前者は、今や最先端の自動車に適用され、そのパフォーマンスの向上に貢献する新しい技術です。一方後者は、古くからの技術を現代科学の目で調査・解明する努力により、さらに深い理解と発展がのぞまれるもので、産業を支える基盤技術の一つです。
 今回の講演は、ダイカストの最先端の適用事例と鋳鉄の「枯らし」という手法の再発見への取り組みの2件の講演でした。1件目は「高性能スポーツカーを支える軽合金鋳物・ダイカスト」で日産自動車(株) パワートレイン生産技術本部 神戸 洋史 氏が、2件目は「「枯らし」による鋳鉄の被削性改善と組織変化-「時間による処理」と「熱による処理」の違いを探る」で(株)スギヤマ 望月 栄治 氏の報告で非常に興味深い内容でした。

高性能スポーツカーを支える軽合金鋳物・ダイカスト
日産自動車(株)パワートレイン生産技術本部 神戸 洋史 氏

神戸 洋史 氏  神戸氏より「高性能スポーツカーを支える軽合金鋳物・ダイカスト」についての報告があった。自動車に求められる性能は多岐にわたっている。地球環境問題への対応、利便性の向上、走行性能の向ww、安全性の向上、など数多くの要求がある。特に、高性能スポーツカーにおいては、走行性能の向上、軽量化など、従来にないレベルでの性能向上が求められる。本講演では、日産自動車の最先端・高性能スポーツカーであるGTRに搭載された新しい軽合金鋳物・ダイカストについて述べ、今後の軽合金鋳物やダイカストの方向性を語った。まだあまり知られていないGTRに搭載されている鋳物やダイカスト部品の中には新しい材料や新しい生産技術の開発により従来技術では適用できなかった部品が多く用いられており、聴講者一同が驚きや関心を持ってみていました。

「枯らし」による鋳鉄の被削性改善と組織変化 -「時間による処理」と「熱による処理」の違いを探る
(株)スギヤマ 望月 栄治 氏
金沢工大 矢島 善次郎 氏
工業所有権協力センター 吉田 敏樹 氏

吉田 敏樹 氏   望月氏により「「枯らし」による鋳鉄の被削性改善と組織変化」についての報告があった。鋳鉄にかつて行われていた「枯らし」(長時間放置)は、現在、残留応力除去熱処理によって短時間で済まされている。ただ、「枯らし」の効果は、単純に残留応力除去熱処理の効果ばかりではないようである。熱エネルギーを使わない「枯らし」の効果により、組織の変化はあるのか、超音波伝播速度の変化などあるのかについて報告があった。現在では「枯らし」の語句自体も知らない人も多く、非常に興味深く聞いている人が多かったようです。

  最後に、余談ですが、つい最近、早稲田大学理工学部大久保キャンパス内に地下鉄副都心線の西早稲田駅が併設され、非常に便利になっていたのが驚きました。以前は高田馬場駅から歩いて15分ぐらいかかっており、帰り際にはいろいろな誘惑が待っていましたが、今ではその誘惑がなくなって学生も勉学にいそしみやすい環境になったようです。