関東支部のご案内
ごあいさつ
支部長に就任して
井田 雅也
去る4月23日の関東支部総会にて、22・23年度の関東支部長を拝命いたしました、日野自動車の井田です。総会の御挨拶でも申し上げましたが、私と鋳物との出会いは、入社した後の事です。金属に関する基礎的な知識も無いままに、製造現場と生産技術部門を中心に歩んでまいりました。そんな中で、自分なりの鋳造に対する思いを申し述べたいと思います。
昨今、鋳造の置かれている環境を考えた場合、なかなか明るい話題が乏しいと感じられるのが会員諸氏の一致した思いではないでしょうか。鋳物から他材質への置換、重厚長大な産業の衰退、大学における金属研究部門の統廃合、また、昨年の春の全国大会のシンポジウムのテーマでもあった、自動車動力源の内燃機関からの脱却(EV化)など、多くの厳しい現実を挙げることが出来ましょう。
しかし、メーカーの一鋳造部門に所属する私としては、若干状況は異なって見えます。開発部門からの製品に対する要求は、地球環境保全、自動車のスピードや性能を維持したままでのエネルギー消費量削減等々、鋳物にはまだこれほど多くの改善要求(期待)があるのか!と考えざるを得ないものばかりです。更に国内から海外へ目を向けた場合、欧州を中心とした先進国を除けば、鋳物の生産技術は作業環境面やエネルギー効率の点も含め、まだまだ立ち遅れていると思わざるを得ません。鋳造技術の発展には多くの期待がかけられ、また圧倒的に鋳造技術者は不足しているのです。
一方で、かねてより若い人材の鋳造離れが問題になっています。確かに弊社においても、希望して鋳造に配属された従業員はほとんどおりません。しかし「設計を希望していた」、「実験がやりたかった・・」が、鋳造に配属され「鋳物」に数ヵ月どっぷりつかった人から、「やめたい」、「他部署に移りたい・・」という声は全く聞かれません。無から有を生み出すおもしろさ、複合的な物性をコントロールする難しさ、鋳造特有の人とのつながり(複数の工程を上手く立ち回らないと、思うものが出来ないからか)などそれなりの理由、鋳造の魅力があるのではないでしょうか。このことをもっと世の中に知らしめ普及させる為には、こども鋳物教室などのイベントを更に発展させることや、自動車産業における鋳物の重要性を再認知してもらう必要があると考えています。
企業人として鋳造に携わり、学会に参画している立場として、「生産現場と研究部門がもっと同じ土俵で歩み寄り、同じ目線で議論が出来たら・・」と感じています。現場は、改善を志すも相変わらず旧態依然の手法にこだわるが故に先へ進み出せず、「鋳物屋は大雑把だ!」と言われる始末。一方、大学を中心とした研究機関では、非常に論理的なメカニズムが数値的に解析されているにも拘らず、それを実際のものづくりに生かせない現実にもどかしさを感じているようです。鋳砂・溶湯・金型・設備といった鋳造の要素に対し、産学官が同じテーマ、同じ目線で、現場で議論しながらものづくりが出来る場を作れたらと思っています。もっともっと多くの企業、技術者や大学を始とするが研究機関、研究者が学会に参加して頂き、人と人とのつながりから鋳造業の改善や発展につながる多くのメリットが生まれる、そんな支部に近づけたらと思っています。