関東支部の活動

研究

日本鋳造工学会 関東支部研究部会 第78回講演会

故きを温ねて新しきを知らば、以って師と為すべし

 去る平成20年12月2日(水)、「ものづくりの原点を聞く」をテーマに、第78回講演会が日立金属「高輪和彊館」で開催されました。鋳造製品が生まれてから長い年月がたち、機械化やIT化など新しい技術が取り入れられてきています。機械化やIT化などにより便利になる反面ブラックボックス化されているため、基本的な事柄を理解していないと、間違ったことが起きても気が付きにくくなっています。そこで今回は、鈴木勉氏(藝文化研究所 理事長)と西直美氏(日本ダイカスト協会 技術部長)お二人に「ものづくりの原点」について興味深い講演をしていただきました。

革新の時代・飛鳥を生き抜いた技術者 「鞍作止利」
工藝文化研究所 理事長  鈴木 勉 氏

鈴木 勉 氏鞍作止利 古墳から飛鳥時代に遷る頃、日本は仏教を受け入れて大変革を遂げ、大きな仏像や巨大寺院を初めて作った。それまで馬具や装飾品を作っていた在来の金工技術者は、司馬達等(しばたつと)らの渡来技術者と協力し、仏像や寺院をつくる新しい業種に取り組み技術移転を成功させ、それを大切に子孫に伝え激動の時代を生き抜いた。技術者 「鞍作止利(くらつくりのとり)」は,達等の孫で法隆寺金堂の釈迦三尊を作った有名な仏師である。技術者は、時代に即した技術・職業に自ら変わらなければ行き抜けないことを改めて知り、考えさせられる深い内容でした。また、テキスト「ものづくりと日本文化」という本も非常に興味深いので今一度読まれると良いと思われます。

草創期のダイカスト-先人達の知恵と努力-
日本ダイカスト協会 技術部長  西 直美 氏

西 直美 氏 草創期のダイカスト技術をいろいろな工夫やエピソードを交えて紹介していただいた。ダイカストが発明されてから約170年が経過、日本においてはダイカストが事業化されてから90年となり、今や自動車産業を中心とする多くの産業において不可欠な素形材産業の一つに発展しています。今では、ダイカストマシンは油圧式ということしか思い浮かびませんが、草創期では手動であり、水圧式に変化し、さらに油圧式へと変わり,この技術が劇的に変化してきたことが改めてわかりました。古い映像もあり、非常に興味深く聴かせてもらいました。また、紹介された草創期のダイカスト品(写真)は、昔懐かしいものばかりでした。

草創期のダイカスト品