関東支部の活動

研究

第21回加山記念講演会

鋳造中核人材育成-「鋳造カレッジ」の展開-

石原技術士事務所 石原 安興 氏
石原 安興 氏

ご講演中の石原氏

 平成21年4月24日(金)に日本鋳造工学会関東支部 第21回加山記念講演会が日立金属高輪和彊館で開催された。今回は、石原技術士事務所 石原 安興氏に「鋳造中核人材育成-「鋳造カレッジ」の展開」と題して、数年前から進められている「鋳造中核人材育成プログラム」についてご講演頂いた。氏は,早稲田大学理工学部卒業後、日立金属㈱に入社し、自動車用鋳物製造や研究に携わるとともに、海外へ出向きベネズエラや韓国で鋳物工場の立ち上げて来られました。帰国後,同社真岡工場工場長、素材研究所々長を経て、2002年に退職され、石原技術士事務所を設立、現在に至っております。鋳物の開発・製造について非常に造詣が深いばかりではなく、次世代の人材育成に熱意を持ってご活躍されております。

 ご講演内容を少し紹介させていただくと次のようになります。
 ここ数年の中国の鋳物の生産量の著しい伸びに比べて日本はほぼ横ばいである。これまで日本は諸外国に比べ、良好なチームワークで顧客に密着した製品作りで不良低減活動を行っている。ということは、鋳物業界は現場力が諸外国に比べ、著しく強いことがわかる。しかしながら、中国などアジア諸国のキャッチアップ(先進国に追いつこうとする努力)の中、ベテラン技術者の大量退職や若者のものづくり離れによる人材難に直面しているのが現状である。とは言え、輸入品との差別化には総合的な高付加価値(短納期・軽量・加工レス等の統合)の実現が不可欠で人的資源の確保という課題がある。ドイツでは、昔からマイスター制度が確立され、次世代の技術者の教育がなされてきたが、日本にはまだなかった。
 経産省の一声で、平成17年度~19年度に「産学連携製造中核人材育成事業中核人材育成プロジェクト」が立ち上がり、鋳造では日本鋳造工学会が参加表明した。目的を「今後20年間世界をリードする鋳造の開発・生産拠点を日本各地に形成するため、産学官の協力体制のもとに鋳造現場の中核人材を全国規模で育成する」こととした。特徴は、ナショナルプロジェクトとして以下の2点を両立できる拠点を日本各地におく組織の形成することである。

①世界最高の鋳造工程管理技術を体系的に習得できる場
②地域の中小企業も気軽に活用できる場

講演中の石原氏と聴講者

講演中の石原氏と聴講者

 受講者は全国の鋳造メーカーの製造現場の中核人材とした。近畿大学をセンターに九州、近畿、中部、関東の4か所で鋳造に関する人材育成を行った。今回のプロジェクトは、今まであった鋳物の技術的な講義だけでなく、鋳物会社または工場をマネイジメント出来る人を育てるためのものであるので、工場管理、原価管理、品質管理等のカリキュラムも組み込まれている。次に関東拠点の17年~19年度実施状況を述べられた。3年間の講義・ケーススタディー・工場見学・インターンシップが組まれていており。非常に充実している内容である。平成19年度からは鋳造カレッジが始まったが、関東支部では平成20年度から「鋳造カレッジ」を始めた。この「鋳造カレッジ」は日本鋳造協会が主体となり、日本鋳造工学会の協力得て実施している。日本鋳造工学会がカリキュラム企画・講師選定を行い、日本鋳造協会が企画・運営し、「鋳造技士」資格授与を行う。さて受講者の感想であるが、「鋳物作りの理論がわかった」、「マネイジメントの講義がためになった」、「鋳物作りの仲間ができた」,「鋳物は形が出来ればよいと思っていたが材質が重要だ」であり、特に「鋳物作りの仲間ができた」ということで卒業生が定期的に会うようになった話も聞け、横の繋がりができたこともうれしく思っている。最後に「鋳造カレッジ」という、日本の鋳物作りを担う人を産学官共同で育てていく手段の第1歩ができた。さらに日本鋳造技術を世界の最先端を保っていくためには,初級講座から大学院レベルまでの鋳造教育システムを構築していくべきであると力説されておりました。

以上

>>歴代加山記念講演会