関東支部の活動

研究

第26回加山記念講演会

第26回加山記念講演会開催される

研究委員会 主査  吉田 誠

 平成26年4月14日、日立金属高輪和彊館にて、第26回加山記念講演会が開催され、埼玉大学名誉教授の加藤寛氏より「非鉄合金鋳物における初期凝固組織の形成過程」と題して、ご講演頂いた。近年、機器類の微小化が進められるとともに、マイクロ鋳造の重要性も高まっていること、また、最近実用化された3Dプリンター製造においても、金属粉末のマイクロ凝固の知識が必要となっている。これらの背景から、マイクロ鋳物で大きな割合を占める初期凝固組織の形成について事例を紹介して頂いた。

 まず、金型鋳造を模擬し、Cu基盤上にAl-2 mass% Cu合金及びZn-2 mass% Al合金の溶湯を落下させて合金底面を観察したところ、FCC構造のAl-Cu合金とともに、HCP構造のZn-Al合金でもチル層が観察された。このチル層は基盤表面の加工痕に沿って核が発生した後に平滑界面成長し、半径20 ~ 40 mmの半球状のディスクに成長し、その後、セル状のプレデンドライトがディスクから放射状に成長し、最終的に、樹枝状晶が優先成長方位に成長して、形成されると考えられた。

 次に、砂型鋳造を模擬し、耐熱ガラス平板上にAl-2Cu合金及びZn-2Al合金の溶湯を落下させた。すると、合金底面に厚さ数10mmの表面層が観察され、その上方に樹枝状晶が成長していた。また、金型中で溶湯が徐冷した場合の凝固組織の形成を調べるため、Al-2Cu合金の薄板試料(厚さ:1 mm)をCu基盤上に置き、徐冷させたところ、合金底面に厚さ数10mmの表面層が出現し、その上方に樹枝状晶が観察された。これらの結果より、断熱性の高い鋳型に注湯したり、熱伝導性の大きな金型中で徐冷した場合、合金表面で核発生して平滑界面成長し、層状の表面層を形成した後、不安定化して樹枝状晶に遷移する、と考えられた。

 以上の結果、基盤上で凝固を開始した場合、凝固条件によらず、合金表面で核が発生し、平滑界面成長して半球状あるいは層状の初期凝固層を形成し、その後、不安定化してセル状晶や樹枝状晶に遷移していく、と推定された。なお、凝固の初期段階における平滑界面成長は、初期凝固モデルによる予測とも定性的に一致するとのことだった。

 昨今鋳造分野では、今回ご講演頂いた初期凝固層の形成などの凝固に関する基礎研究が減少している中、マイクロ鋳造などの新技術開発において、その開発を確実なものとするためにも、基礎に立ち戻って、その技術の本質を理解し、考えることの重要性を再認識させられた。

(東京工業大学 原田陽平)