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リレーエッセイ

ランニングのススメ

東京都市大学 工学部 機械工学科
機械材料研究室 白木尚人

 走り始めたのはいつだったか・・・・・・?平成19年の5月に教え子の結婚披露宴に招待されたのだが、披露宴で飲み食いする前なのに礼服にいつもの余裕が無くパッツンパッツンであった。確かにその時携帯電話で撮った写真を見ても、顔はプックリしている。後日、スーツを買いに出かけウエストを計測したら、なんと96cm!道理で礼服もキツイ訳である。店員さんもこちらの空気を察したのか、「本日、お求めになりますか?」と聞いてきたが、完全にメタボ領域のスーツを購入するのは沽券にかかわるので、「後日、スリムになってから、また来ます。」と言って店を出た。それからランニング生活がスタートした。

 とは言え、昔から長距離を走るのは大の苦手。100mでさえ長距離と定義していた私である。しかし店員さんに大見得を切った手前、昼休みを利用して走りに出かけた。まずは片道2km。そこで十分休んで復路の2km。研究室に戻り、顔を洗って汗を拭って仕事。全身あちこちが痛くて、おまけに疲労感からか手の震えが止まらない。これでは仕事にならんな〜と思いながらも、3日に1回位の間隔で同じ様に走り始めた。すると2週間続けた頃から、走った後の疲労感は徐々に爽快感に変わり、疲労感から来る手の震えは全く無くなった。自分のお腹を見ると、パンパンだったはずのお腹は変化を見せ、臍の両側あたりに凹みができてきた。1ヶ月経った頃には、学生さんから「顔がシャープになりましたね。」とか「お尻が小さくなりましたね。」とか「脚が長くなったように見えます。」といったお褒めの言葉を頂いた。確かに約20年前に履いていたジーンズも履けるようになったし、お尻から腿にかけての無駄な肉がほとんど取れている様に感じる。体重も5〜6kg程減っていた。さて、あの店に行ってウエストをはかってみたら、83cm!約1ヶ月で13cm減。それからというもの、3日に1回とはいかないものの、週に1〜2回は走るように心がけ、それまでは2km走って息を整えてから復路2kmを走って帰ってきていたのが、それ位の距離なら連続して走ることが出来るようになっていた。約1年後には、(勿論、かなり手加減して貰っているが)学生さんと一緒に10kmも走れるようになってきた。元々太りやすい体質の上に、呑むのも食べるのも好きなたちだし、何よりも四十路に入ってからは、脂肪がつきやすく、取れにくい身体になってきた。これが走るようになってから、劇的な体質改善。以下に、私の身体に現れた変化の数々を示す。

(1) 呑んでも食べても太りにくい体質になった(脂肪の燃焼効率が良くなった)。
(2) 以前からあった肩こりや腰の張りが無くなった(血行が良くなり解消)。
(3) 疲れにくい身体になった(体力・持久力アップ)。
(4) 特に走った日は、(短時間でも)熟睡できるようになった。
(5) 病気し難い身体になった(抵抗力アップ)。
(6) 肩から二の腕にかけての無駄な肉が消えた(腕を振って走るので、この部分も減る)。
★注:上記の効果には個人差があります。

 私の熱心な?トレーニングを見てか、卒業する学生さんからGPS機能付きの時計を頂いた。時間だけでなく、走った距離・場所が分かる。頂いてから約1年、今までに走った総距離は約540km。東京−盛岡間に相当する。思えば遠くへ来たものだ。ここまできたら、最終目標はフルマラソン完走。幸運なことに2012年、2013年と2年連続で「東京マラソン」に当選し、目標である5時間を切るタイムで完走した。2014年3月には卒業する学生さんと一緒にフルマラソンを走ってきた。よく「マラソンなんかやって何が楽しいの?」と聞かれるが、実の所、私もよく分からない。先日、朝日新聞の調査によると、フルマラソンを走った経験のある人は約3%だそうだ。ハーフマラソンを含めても8%だという。大会前は練習しなくてはならないし、スタートしてから20km位は楽しく走れるが、30km過ぎてからはかなりキツイ。どんなに走り込んでいても完走翌日は、大学に行かなくてはならないし、筋肉痛は想像を絶するほどである。出場した3回のマラソンにおいてゴールした時思うのは、「マラソンは、もうやめよう。」と思うのだが、先日、2015年3月に開催される「横浜マラソン」にエントリーしてしまった。ソフトなランニングから始めたはずだが、ハードなランニングに変わりつつある。マラソンと同じく人生は長い。さすがにスピードアップは望めないが、今後も楽しくハードに鍛えていこうと思っている。いつまでも楽しく呑んで食べていくために。