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リレーエッセイ

“ 空間 ”とアレルギー

佐藤 和則 氏

 何事にもスピードが要求される現代、その変化に適応できるものが生き延び適応できないと取り残されてしまう。ものづくりも同様で技術的進歩に伴って機械装置が変化しそれに合わせて合理化されてきた。過去に五つの生型ラインで生産していた鋳物を今はひとつのラインでカバーできるほど生産性が向上し合理化が進んできた。それだけ少ない人数で生産ができるように変化してきたといえる。これは一企業の例であるが日本全体に置き換えると、鋳物生産量が横ばい又は低下傾向を示す中でこれだけの生産性が向上すればそれをカバーする鋳物メーカーも減少するわけである。

 新幹線を利用することで移動時間が短くなり、その便利さは痛感しています。若かったころ移動に時間が掛った時代の身を持った体感は、新幹線を使うことにより短時間で移動し、はるか遠くの地で目的を遂行できる現在は、瞬間移動にも似た思いがある。これはあまり飛行機を利用しない人間の愚感です。移動の話しはその地へ着けば目的を達成し、移動が速ければ便利さの恩恵を受けるわけで、まさに「時は金なり」は効率と経済性を表現した言葉ですが、その移動過程で人間が思いを巡らせる時間軸の差は人の感情に大きな差“ 空間 ”となって現れます。

 JRの夜行列車ブルートレインが次々と消えていき、今年3月には“北斗星”が運行を取りやめました。活躍した歴史の幕が閉じられ過去のものとなる映像を見るたびにさびしさを感じるものです。新幹線のスピードに慣れた現代人には、のんびりとした列車ですが、長時間列車に乗った時の旅情などを窺わせる雰囲気は何か感じるところがあります。東京オリンピックが開催された1964年10月に東海道新幹線が開通して以来、鹿児島、青森まで新幹線が延び続け、今年3月に北陸新幹線が金沢まで開通しました。来年には、青函トンネンルを超えて函館まで新幹線が開通する計画となっているようです。新幹線が開通するごとに日本各地が手短になりますが、将来リニアモーターカーが完成するとスピードが速く便利になり更に日本が狭くなります。

 肥満の原因と言われているのが「食べ過ぎ」と「運動不足」で、これはそれなりにコントロールする必要があります。暴飲暴食で食っちゃ寝していたら、やっぱり太るのは当然です。ただ、そこに第3の原因として「腸内細菌のバランス」が非常に重要であることがわかってきた。最近、腸内フローラが話題になっていますが、腸内細菌といえば「善玉菌」「悪玉菌」を思い浮かべます。私たちの腸内には100兆以上もの細菌が住んでいて、その細菌が出す物質と全身の健康とが深く関わっていることが分かってきた。美肌やダイエットなど身近な話から、がんや糖尿病、うつなどの病気まで関係するようである。既存の治療だけでは限界のある病気に対する切り札として、腸内フローラが脚光を浴びているようだ。腸は栄養を吸収するため多くの(イソギンチャクのような)ひだで被われている。それは表面積をかせぐためと思っていたが、ひだの中に腸内細菌が住み込み、ひだの表層は粘膜で被われた状態になっている。食べたものが胃で消化され腸を通過するときに、ひだの部分から吸収され栄養になる。その時に、どの栄養分を吸収するかしないかを判断するのが細菌の役目であることが分かってきた。従って、細菌の種類とその勢力分布によって栄養分の取り込み方に差が出てくることになる。これが頭脳に通じる神経へも影響し、うつ病になりやすいかなりにくいかまでもこの腸内細菌が左右すると云われている。昨年12月に体調を崩し1ヶ月間休養を取りました。血液中に細菌が入り込みアレルギー症状を引き起こしたのが原因でした。入り込んだ細菌の種類は不明で、腸内フローラとは関係ありませんが、どうしてもこれと重ねて考えてしまいます。

 「現場鋳造技術研究会」は日本鋳造工学会関東支部の創立の位置づけともいわれる貴重な研究会ですが、今年3月まで3期半7年間担当させて頂きました。第134回を数え延々と途切れることなく続けられてきた歴史ある研究会であり、先輩各位の努力に敬意を表するとともに、小生が担当した期間も計画通り開催できたことを関係者各位に感謝申し上げるしだいである。研究会は会員制で運営されていますが、この間2~3会員企業の入れ替わりがあったものの、会員企業数23社はこれまでの歴史の中では多い会員数となっており、さらに3社がオブザーバーとして参加しています。最近、若手技術者の参加が多くなってきたように感じられるのは気のせいでしょうか。喜ばしいことです。

 研究会の特徴は、どのような内容でも形式に囚わらないで発表者が自由に説明し議論が活発に行われる点が、出席者各位の研鑚に有効となっていることが挙げられる。発言も若手・ベテランに偏らない自由な雰囲気があって参加者も多くなっているものと考えています。更に研究会終了後に行われる懇親会は、重要な情報交換の場になっていることは間違いありません。


現場技術改善事例の編集例

 現場鋳造技術研究会では発表した改善事例などを活動実績として数年単位で冊子に編集してきました。これまでに編集した改善事例集は11集になります。最近、発表のスタイルがパワーポイントを利用する形式が定着してきたため、前回の第10集からCD形式に変更しました。第11集は第108回~第128回までの事例発表をCDに編集したものです。CDは会員に配布していますが、改善事例を広く一般に活用して頂けるように安価で外販できるよう計画しています。頒布方法が確定したら、皆様にお知らせしたいと考えています。当研究会の活動は各会員企業における改善活動の様子を知ることが出来、若手技術者の教育はもちろんのこと会員企業各位における技術のレベルアップに必要な情報交換ができます。興味のある皆様の参加をお待ちしています。オブザーバーでの参加でもお声を掛けて頂ければ幸いです。