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「五街道をあるく」 夫婦二人旅

(その9)甲州道中を釜無川に沿ってあるく

(株)トウチュウ 青木 正

 中山道を踏破してから半年後の2003年4月6日に甲州道中を歩く。江戸時代の甲州道中は起点の日本橋から中山道と合流する下諏訪に至る全長55里(約220キロ)に45の宿場があり、現在の国道20号線がその
ルートを継承している。

 甲州といえば16世紀後半、甲斐に60余年にわたって君臨していた武田信玄の名がまず浮かぶ。その武田信玄が釜無川の氾濫を防ぐため、17年の歳月をかけ築いた「信玄堤」は甲府の西、竜王町を流れる釜無川の左岸3キロにわたる。武田信玄は治水の名将でもあった。信玄堤は信玄神社をはじめケアキ、エノキが生い茂る森林公園となっている。堤防からは南アルプスの鳳凰三山、川下の方向には富士山を眺めることができる。

 甲州道中は韮崎を過ぎると、釜無川に沿って七里岩の切り立った断崖が続く。韮崎宿を出て釜無川に沿って進むと、一ツ岩の路傍に「十六石」の石碑が立っている。武田信玄が晴信といわれた頃、釜無川の水害から部落を守るため堤防の根固めに並べた巨大な岩が十六石でその後、徳川時代になって人家が集まり、韮崎宿が栄えるようになったといわれる。

釜無川に架かる信玄堤

釜無川に架かる信玄堤(03.5.1)

萬休院・長松寺の「舞鶴の松」

萬休院・長松寺の「舞鶴の松」(03.5.10)

 甲州街道から外れ牧の原の信号を右折し、中学校の先の大武川を渡り「水車の里公園」を経て、萬休院への急坂を上る。萬休院の境内にある「舞鶴松」は樹齢450年以上、総枝回り75m、高さ9mの巨木で、その名のとおり鶴が舞う姿に似た優雅な姿は国の天然記念物にも指定され、平成二年には「新日本名木百選」にも選ばれている。この近くには「神代桜」の名木もある。

 尾白川を渡り、花水坂を上ると台ヶ原宿の入り口の正面に「日本の道・百選」の看板が立っている。国道と分かれ旧道沿いには古い家並みや、諸大名の宿舎となった豪商・北原家と、創業三百年といわれる酒蔵「七賢」がある。ここは名水の里でも知られている。

 台ヶ原では江戸時代の雰囲気を残す「つるや旅館」に泊る。「津留や・諸国旅人御宿・つるや」の古い看板が宿場町の面影を今でも残す。宿は隣の新館にとる。天候が思わしくなかったため、早朝6時半に出発し富士見に向かう。

(次回は日光道中の杉並木)