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鋳物用語解体新書

おしゃか

 鋳物といえば、鍋釜から水道管にマンホールの蓋そして機械部品や自動車部品まで広範囲に普及している今日だが、昔はおもに政(まつりごと)に関する仏像が鋳造で作られていた。奈良や鎌倉の大仏をはじめ大小のものが作られている。そんな時代に「おしゃか」が鋳物師の間で使われ始めたと聞く。

あるとき、ある鋳物師が「阿弥陀如来」像を鋳造したが、型ばらしして出てきたのは光背の無いものだった。温度が低いため湯がのたらず光背まで回らなかったためであろう。

当時は電気炉も温度計も無く、鋳物師の経験による鋳造である。従って、こんな事はよくあったようで光背がなくても「釈迦如来」像には見えるから「お釈迦様になった」と言う訳である。人間味あるのどかな話である。「おしゃか」とは「不良品」なのだが、アナログの良き時代の日本が偲ばれる粋な言葉である。

(2009年2月)

阿弥陀如来像

阿弥陀如来像

釈迦如来像

釈迦如来像