誰でも分かる技術

誰でも分かる鋳物基礎講座

生型砂とベントナト

1. 生型砂とその材料
(株)ボルクレイ・ジャパン  片岡 茂

 生型砂の品質は,鋳造品の良否を大きく左右します。これまで,生型の品質については、多くの諸先生、諸先輩の研究が発表されています。それらの知見と私のこれまでの経験を通じて、現実の問題と近そうな何点かを3回に亘って纏めます。


表1 主な鋳型の特徴1)

 生型造型法の生い立ちは割愛致しますが、量産鋳物の分野ではこの造型法が主に使われています。生型が普及した大きな要因は、表11)から、①材料費が安く、②生産性が高い(最新機種の造型速度:“十数秒”)、③砂の再利用率が高いこと等を挙げることができますが、これに加えて鋳物工場の生産性改善、設備メーカーの設備革新、新規材料の研究開発など関係各位の多くの努力あっての結果とおもわれます。
 生型とは、砂(骨材)、ベントナイト(粘結材)、石炭粉や澱粉など(二次添加材)そして水からを適切なバランスで配合されたもので、以下に各構成材料の特徴を説明します。

(1)骨材

表2 鉱物の組成と融点2)

 ①けい砂は、生型用の骨材として主に使用されています。これは、耐火度が高く、入手が容易ですが、熱膨張が大きいのが欠点です。この膨張による型の変形を抑える為に、方案や砂添加剤などの工夫がなされています.
 けい砂(山砂も含めた)に選定には、その粒径(粒度分布、粒度指数)、粒形、耐火度(融点)等が重要になります。特に耐火度は,けい砂の成分、特に主成分であるSiO2にの含有量依存します。この含有量は産地によりまちまちで、SiO2:60~99.9%(に対しAl2O3:20~0.1%)の範囲にあります。表22)で分かるようにSiO2(石英)の融点は1,750℃ですが、山砂は正長石や相長石などの随伴鉱物とから構成されるので、その融点はSiO2が多いほど高くなります。一般的になじみの深い浜砂の融点が低いのは、SiO2の含有量が低くその分随伴鉱物が多いためですが,熱膨張量が低いのでシェル中子砂としての活用やスクワレ対策として用いられています。
②特殊砂として、ジルコン砂、クロマイト砂、オリビン等がありますが、けい砂に比べ入手し難く高価です。しかし、耐火度が高く、熱膨張が低いなどのメリットを有しています。
③最近は,人工セラミック砂も開発され使用されています。単価は高いが、高い耐火度と熱膨張が低いなどの他,粒形が球形なので添加材使用量の低減、耐破砕性が高く微粉が低減され寿命が長いなどのメリットがあります。

(2)ベントナイト


図1 モンモリロナイト(ベントナイト)の層状結晶構造1)
 粘結材であるベントナイトの呼び名は米国ワイオミング州フォート・ベントンで初めて採掘され、呼び名の由来は,ベントンで採れる資源鉱物(nite)から来ていますが、粘土鉱物上の名称はモンモリロナイトで、太古の昔、火山灰が堆積し、地熱等の影響で変化したものです。蛇足ですが、弊社のボルクレイグループのボルクレ
イはVolcano(火山)とClay(粘土)から作られて造語で、ロゴマークは火山です。
ベントナイトの層状結晶構造を図11)に示します。層間の寸法が9.6Å(オングストローム)(=0.96nm=0.96×10-9m)と非常に小さなものです。
 Na系ベントナイトとか、Ca系ベントナイトと言う分類を耳にしたことはあると思いますが、図1の交換性カチオンにはNa+、K+、Mg2+、Ca2+等のいずれかの陽イオンが入ります。Na+の割合が高いものがNa系ベントナイトと呼ばれ、Ca2+の高いものがCa系と呼ばれます。また,Na系ベントナイトでもNa+の割合は産地によりまちまちで、産地により大まかな特徴を分類できます。
 活性化ベントナイト(Na処理ベントナイト)は,Ca系ベントナイトのCa2+をNa+の陽イオンに置換したものです。生型砂におけるベントナイトの特徴は次回で説明します。

3)石炭粉
 石炭粉の添加目的は、①鋳肌改善、②焼着き防止、③鋳型と製品の砂離れ改善、④スクワレ防止、⑤FCDでのピンホール防止などです。①~③はガスフィルム説、還元性雰囲気説、ラストラスカーボン説等があり,④は溶湯熱で石炭粉が燃えて無くなり、けい砂の膨張を吸収する(膨張代となる)などです。石炭粉の替わりにコークス粉、黒鉛粉、ピッチ粉、ギルソナイト等の代替品を使用している工場もあります。

4)澱粉
 澱粉の添加目的は、①スクワレの防止、②表面安定性や③鋳型抜型性の向上、④水分低下の防止(保水性とも言う)です。α澱粉(水と接すると直ぐ糊化するように熱処理したもの)とβ澱粉(水と接しても糊化せず、溶湯熱を受けて初めて糊化するもの)があります。原料は「とうもろこし」、「米」、「じゃがいも」、「タピオカ」、「こんにゃくいも」等があり,「ソルビット」などの代替品も使用されています。
参考文献

  1. 太田英明:鋳型の生産技術(1995年 素形材センター)
  2. 久恒中陽、河野良次郎共薯:鋳物砂とその処理(1965年 日刊工業新聞社)