誰でも分かる技術

誰でも分かる鋳物基礎講座

砂型

旭有機材工業(株) 奥山 賢一郎
4 コールドボックス法の概要

4-1 コールドボックス法の種類について

 コールドボックス法とは、有機粘結剤(以下「樹脂」)を使用した鋳型にガスを通して硬化させるガス硬化造型法の一種であり、鋳型作製工程に型(木型や金型)加熱を伴わないプロセスを指しており、型加熱を伴って造型される既存のホットボックス法、ウォームボックス法と区別・分類する場合の対義語となっている。
 コールドボックス法はガス通気による非常に速い反応速度(硬化速度)、長い可使時間、内部硬化性に優れていることなどの特徴である。硬化速度は、他の自硬性鋳型造型法が分単位であるのに対して、コールドボックス法は秒単位である。また、条件により違いはあるものの、可使時間は自硬性鋳型造型法が長くても30分以内が一般的であるのに対して、90分以上と長く、高い作業性と生産性を兼ね備えた優れた鋳型造型法であると言える。さらに、シェルモールド法と比べると鋳型の内部まで短時間で硬化させることができる。コールドボックス法の代表例としては、以下の3種類があげられ、それぞれに異なった特徴を有している。

コールドボックス法の種類 ガス種 樹脂種
アミンコールドボックス法 アミンガス フェノール樹脂
イソシアネート樹脂
CO2コールドボックス法 炭酸ガス フェノール樹脂
エステルコールドボックス法 エステルガス フェノール樹脂

とりわけアミンコールドボックス法は、CO2コールドボックス法やエステルコールドボックス法に比べて、優れた鋳型強度と生産効率、鋳物品質、ランニングコストなどが高く評価され、日本国内で自動車産業を中心に最も多く使用されているガス硬化造型法である。単にコールドボックス法という場合にはアミンコールドボックス法を指す場合が多い。
 アミンコールドボックス法はフェノール樹脂とイソシアネート樹脂の2種類の樹脂を砂と混合して、目的とする型内に充填した後、アミンガスを通気して鋳型を得る。
 一方、CO2コールドボックス法、エステルコールドボックス法は、1種類の樹脂と触媒ガスを用い、アミンコールドボックス法とは樹脂種や反応メカニズムが異なっている。樹脂にはそれぞれ適正に調製された水溶性アルカリフェノール樹脂を用い、樹脂タイプに応じてCO2ガスあるいはエステルガスを通気して鋳型が造型される。アミンコールドボックス法と比べて、鋳型強度の低さが欠点であるが、臭気や煙等の作業環境を改善できるという利点もある。

上記3種類の他にも、幾つかのコールドボックス法が開発されているが、現在国内においてはほとんど広まっていない。

4-2 アミンコールドボックス法の普及

 もともとコールドボックス法は、1968年米国アシュランド・ケミカル社が米国鋳物協会(AFS)展示会において常温で鋳型を硬化させる「アミン硬化フェノールウレタン粘結法」に「コールドボックス法」という名称をつけて紹介したのが最初である*1)。その後、このいわゆるアミンコールドボックス法は、前述のような優れた性能が評価されて広く認知されるようになり、1973年の第1次オイルショック以降の省エネルギー指向の高まりにより急速に普及し、自動車用鋳物部品の中子造型プロセスとして幅広く採用されるようになった。
 型加熱不要で常温ガス硬化のアミンコールドボックス法は、従来の型加熱を要するシェルモールド法に比べて、エネルギー消費量が1/7以下*2)と少なく、かつ優れた内部硬化特性と造型サイクルの速さから、大量生産型に向いた高効率な生産性を実現している。しかし、一方では、ウレタン結合を有する樹脂硬化物の化学的特質上、熱間特性に限界もある事から、国内では耐熱性の高いシェルモールド法との適用分野が一定レベルでなされつつあり、アミンコールドボックス法は、量産鋳物の中でも比較的肉厚で大型の鋳物に適用される事例が多く見られる。本法の使用比率は国内よりも海外の方が多く、特に欧米では高い比率で使用されている。
 実際にアミンコールドボックス法を実施するにあたっては造型機が必要となる。混練、型込め、ガス通気、排ガス中和などの工程がシステム的に備わる、いわゆるコールドボックスマシンや、汎用性を重視したボックスタイプのマシンなどである。前者は金型を用いた量産型造型に適しており、後者はサイズや形状の異なる木型でも使用できるなどの利便性が特徴である。
 本法を適用するにあたって、とりわけ注意が必要となるのは、触媒ガスの取り扱いである。一般的に使用される触媒ガスは引火性が高く危険物であり、臭気も強い為、漏洩や引火がないよう考慮する必要がある。また、触媒ガスより危険性は低いものの、樹脂も危険物となり該当法規に準じた取り扱いが必要となる。

アミンコールドボックス法の利点と欠点

利点

  • アミンコールドボックス法は型加熱を必要としない為、消費エネルギーはシェルモールド法の1/7*2以下である。
  • 従来法に比べて造型スピードが早く、生産性はシェルモールド法の2~4倍である。
  • 型加熱がない常温硬化である為、鋳型の膨張、収縮、変形が少なく、寸法精度の高い鋳型が得られる。
  • 型加熱が必要ない為、木型、樹脂型、アルミ型、鋳鉄型などの型材質が選択でき、型の製作費、修理費が安価である。
  • 適用範囲が広く、多量生産、多品種少量生産のどちらにも対応できる。
  • 鋳型の内部硬化、崩壊性が良い。

 

欠点

  • 中空鋳型の作成がシェルモールドほど容易ではなく、鋳型重量が重くなる。
  • 型へのシミツキ(鋳物砂が模型に付着する現象3))が生じやすい。
  • シェルモールド法に比べて可使時間が短い。
  • シェルモールド法に比べて熱間強度が劣る。

 

 次回は実際にアミンコールドボックス法を適用するにあたっての基本的な知識とその仕組みについて述べる。

参考文献    
社団法人 日本鋳造技術協会「第4版 鋳型造型法」(1996)

引用文献
1) 中小企業総合事業団「量産鋳物用鋳型・中子に係る技術・技能」(2000), pⅠ-3
2) 社団法人 日本鋳造技術協会「第4版 鋳型造型法」(1996),p199
3) (社)日本鋳造工学会編;「図解鋳造用語辞典 初版」日刊工業新聞社発行(1995), p89