誰でも分かる技術

誰でも分かる鋳物基礎講座

鋳鉄の材質及び基礎知識

2. 鋳鉄の用途 - 「2-2 材質を管理・保証する手立ては」
石原技術士事務所 石原安興

 鋳鉄の中でねずみ鋳鉄と球状黒鉛鋳鉄が多く使われていますが、その材質は、まずは黒鉛の形状が大きく影響する。ねずみ鋳鉄ではA型のように黒鉛が、ほどよく分布し、方向性が見られない黒鉛が機械的性質において優れている。このA型にするには化学成分の管理と接種をきちんと行うことである。また、薄肉であったり小物であったりすると鋳物の冷却が早く、黒鉛がD型になってしまうとかチルが出ることがある。このようなときには、Si%を上げるとか、接種量を増やすとか、薄肉の傍に“はかせ”をつけ、薄肉部にはじめに入ったぬるい湯を通過させ、鋳型内で製品の外に作った“はかせ”に、はかせてしまう等の手立てが必要である。  黒鉛の形状を検査し、保証するには製品の一部、または同時に注湯した試験片を顕微鏡で検査するしかない。

 球状黒鉛鋳鉄では、勿論球状が良い。Ⅴ型とかⅥ型のかたちのものが全黒鉛の70%または80%(これを球状化率という)以上占めないと機械的性質が悪くなる。球状化率が良いかどうかは、顕微鏡で組織を見ないでも、破面試験でも分る。鋳物砂を固めたところに15φで長さ150mmくらいの棒を差し込み、穴を開けその中に球状化処理した湯を注ぎ、冷却後ハンマーで折って破面を観察する。白っぽければ球状化は70%程度以上であるし黒っぽければ球状化が70%以下の恐れがある。この方法は簡単だが、丸棒を折りにくいので、シェル型等で25×30×100mmくらいの形状で中間にノッチが付 いた試験片を鋳造し、ノッチのところから折り取りその破面を見るという方法がある。

図1 超音波音速計

 さらに簡単なのは、製品をつるしハンマーで叩いてみると球状化がよければ澄んだ音がし、球状化が悪ければ鈍い音がする。もう少し精度良く球状化率を測定したいなら、超音波を試験片または製品にあて、その中をどのくらいの速さで超音波が伝播するかを知ることによって球状化率を測定する方法もある。

 黒鉛の次に重要なのが、基地組織である。正常な鋳物はパーライトという硬くて強度の高い組織とフェライトという柔らかくて引っ張り強さは弱いが伸びに優れた基地組織からなる。ねずみ鋳鉄はほぼ全体がパーライト基地組織になるが、球状黒鉛鋳鉄においてはグレードによってこの両方の組織の割合は変わってくる。この基地組織を決めるのは、まずは化学成分であり、きちんとした管理が必要となる。また、特に球状黒鉛鋳鉄では冷却速度も影響してくるのでフェライトが欲しければ型の中でゆっくり冷やす必要がある。型ばらしまでの時間を長くし、型ばらしの時には製品が黒くなっている状態にしなければならない。

 また、上述したようなチルはねずみ鋳鉄でも球状黒鉛鋳鉄でも望ましくない。チルはチル試験片で管理・保証することが出来る。次に、パーライトの程度を調べるには硬度(通常はブリネル硬度計を使用)を測ると推定できる。その他、鋳鉄鋳物に磁気を与え、その残留磁気を測定することによって測定する方法もある。